2021年4月1日2日
〈4.2創価大学創立50周年記念特集〉
我ら創価大学は、地球の平和共生の柱なり。
我ら創価大学は、生命の価値創造の眼目なり。
我ら創価大学は、世界市民の連帯の大船なり。
「人間教育の最高学府」たる創価大学を創立して最初の春夏秋冬を経た1972年の5月、私はイギリスの歴史学者、アーノルド・J・トインビー博士とベロニカ夫人のお招きをいただき、ロンドンのご自宅で対談を開始いたしました。
人類の諸課題を俯瞰し、21世紀を展望する語らいの中で、博士ご夫妻が創立まもない創大に深き理解と大いなる期待を寄せてくださったことが思い起こされます。
対話に前後して、夫人の母校であるケンブリッジ大学、博士の母校であるオックスフォード大学を表敬訪問したことも、ご夫妻は麗しい母校愛を光らせて喜んでくださいました。
両大学では、友情に満ちた首脳と学生から温かな歓迎を受けながら、12、13世紀にまで起源を遡る悠遠な歴史を心豊かに呼吸させていただきました。その折、同行の友と語り合ったことが、昨日のように蘇ります。
「わが創大は、まず50年が勝負である。50年先を目指して進もう!」と。
時は巡り、今ここに、誉れの創立50周年を晴ればれと「人間教育」の凱歌で迎えることができました。
私は何よりもまず、創価教育の創始者であられる先師・牧口常三郎先生と恩師・戸田城聖先生に、この半世紀で、まさに奇跡というべき大発展を遂げた晴れ姿をご報告申し上げたい。
そして、青春を懸け、人生を貫いて、私と共に創大城を建設してくださった、全ての学生、卒業生、保護者、教員、職員、支援者の方々、その一人一人に最敬礼して、満腔の感謝を捧げたいのであります。
「民衆立」の真心
この50年を通し、創大の建学精神に連なる尊き友の奮闘の結集によって、磨き上げられた3つの宝があります。
ここで確認し合い、次の50年、すなわち創立100周年へ、さらには22世紀、23世紀へと託していきたいと思うのであります。
第1の宝は、「人間教育」の尽きることなき慈愛の水脈であります。
1930年の11月18日を期して、牧口先生は愛弟子の戸田先生と共に、「子どもの幸福」こそを根本の目的とする創価教育を宣言されました。
国家主義の教育に社会が覆われる中で、目の前の若き命に最も幸福な人生を断じて歩ませたい、一人たりとも絶対に不幸にしてはならないという溢れるばかりの大慈愛から一切を出発されたのです。
それは、あらゆる人の生命に最極の価値創造の智慧が具わっており、その智慧を開き、示し、悟らしめ、入らしめていくという、人間への信頼と尊敬に満ちた深遠なる教育哲学に立脚しておりました。
この心を受け継いで、民衆立の大学の建設に尽くされ、学生を励まし、慈しんでくださった方々のことは、私の胸奥に焼き付いて決して離れることはありません。
遡れば、まだ切り株なども残った広大な建設用地の石拾いや整備に、人知れず奮闘してくださった陰徳の有志の献身がありました。
また、戦争で自らは教育の機会を奪われた世代の方々を中心に、汗と涙の浄財を「平和のフォートレス(要塞)」の建設へ寄せてくださった熱い篤い庶民の真心を、どうして忘れることができるでしょうか。
さらに、何としても、わが子を、わが後進を創大へと、苦労を惜しまず送り出し、常に温かく見守ってくださっている父母たち、地元・八王子市をはじめ日本全国・全世界の宝友たちの祈りに包まれてきました。
そして、建学の精神に勇み集った共戦の同志たる教員、職員は、「わが子にもまして学生を大切に!」との心を分かち合い、創大の誇り高き「学生第一」の伝統を築いてくれたのです。
トインビー博士は「教育を受け、知性を磨いた人は“ヒポクラテスの宣誓”を行うべきである」と語られておりました。教育の恩恵によって得た力と英知を人々への奉仕のために使う誓いであります。
なかんずく、「大学は大学に行けなかった人のためにある」との信条を共有する創価大学には、民衆への報恩の一念が脈打っております。
この励ましと恩返しの麗しき連鎖は、絶え間なく続いていきます。自分が受けた温かな激励や薫陶を同じように友人や後輩たちに、縁する人々に送ろうという息吹が漲っているのです。
就職活動や各種難関の国家試験等においても、草創期から先輩たちが、あとに続く友のために道を開き、自分以上に立派に活躍できるようにとの心で貢献してくれています。これほど美しく、これほど有り難い母校愛の世界はどこにもないでありましょう。
1期生をはじめとする卒業生が、母校の教員と職員の要となり、私の心を心として「学生第一」を貫いてくれていることも頼もしい限りです。
大先哲が示した人間教育の譬喩を、私は若き日から命に刻んできました。
「たとへば根ふかきときんば枝葉かれず、源に水あれば流かはかず、火はたきぎ・かくればたへぬ、草木は大地なくして生長する事あるべからず」(御書900ページ)
創価教育の大地に、青年を愛し、信じ、励まし、共に学びゆく慈愛の水脈が滔々と流れ通う限り、人材の大樹は限りなく林立し、計り知れない平和と文化の華と果を成就することを、私は確信してやまないのであります。
正義の負けじ魂
第2の宝は、いかなる苦難も勝ち越えゆく「創造的生命」の太陽です。
創価大学の誕生は、「大学」自体の「解体」さえも叫ばれている渦中でありました。大学の在り方そのものが本源的に問い直される中で、新たな人間教育の地平を開拓しゆく出発であったといってよいでありましょう。
とともに、東西冷戦に引き裂かれ、ベトナム戦争が泥沼化する世界にあって、平和創造の黎明を告げんと建学の志を高く掲げたのであります。
開学の前から、偏見や憶測の歪んだ批判が浴びせられたことは、もとより覚悟の上でありました。草創のパイオニアたちは、その烈風に毅然と胸を張り、「正義の負けじ魂」を燃え上がらせて学び抜き、どんな圧迫もはね返す真正の実力を鍛え抜いてくれたのです。
トインビー博士とともに、創価の人間教育に深い期待を寄せてくださった一人に、著名な医学・細菌学者のルネ・デュボス博士がいます。
20世紀の開幕の年に生まれた博士は、感染症をはじめ人類を苦しめる病と戦い、「シンク・グローバリー、アクト・ローカリー(地球規模で考え、地域で行動する)」との標語も発案されました。
博士は、力強く語られています。
「常に変化を続ける環境に対して、人間は自ら適応しようと闘ってゆかねばならない」「これは生きものすべての宿命であり、生命の法則でありまた本質そのものである」(『生命の灯』長野敬・新村朋美訳、思索社)と。
それは、牧口・戸田両先生が「創価」の2文字に込められた精神と響き合っております。すなわち、いかなる試練の挑戦にも逞しく応戦し、新たな価値創造を成し遂げゆく生命であります。
私たちが幾たびとなく歌い上げてきた学生歌には――
「誰がために 人間の道 学ぶかな」
「誰がために 平和の要塞 築きたる」
「誰がために 生命の真 求むかな」とあります。
わが創価の同窓たちは、何よりも「民衆」の幸福のためにと、確固たる目的観をもって、「創造的生命」の太陽を昇らせ、青春と社会の苦難に挑んできました。
その光は、通信教育部の開設、さらには創価女子短期大学の開学によって、いやまして輝きを強め、深めてきたといえましょう。
思えば、牧口先生は若き日、創造性に満ちた大著『人生地理学』を著されました。戸田先生も青年時代、数学教育を画する『推理式指導算術』を発刊されております。創価教育は、その淵源から眩いばかりの創造性、独創性の光を帯びているといっても過言ではありません。
向学の友たちは、キャンパスに像が屹立するレオナルド・ダ・ヴィンチやマリー・キュリーなど、人類史の偉人たちからの時空を超えたエールを受けながら、学術・研究においても、文化・スポーツ・社会貢献においても、大学の自治においても、目覚ましい創造力を生き生きと解き放ってきたのであります。
阪神・淡路大震災、東日本大震災をはじめ自然災害の折には、被災された方々と苦楽を分かち合い、「レジリエンス(困難を乗り越える力)」を発揮して、地域の復興の希望となってきた卒業生たちの奮闘がありました。
バブル崩壊やリーマンショックなど社会の激動にも揺るがず、千差万別の各分野で活路を切り開いて、「創大出身者は逆境に強い」等々の賞讃も枚挙にいとまがありません。
あの地この国で、あの道この舞台で、それぞれに創価の人間主義の旗を掲げて、勇敢に誠実に忍耐強く貢献しゆく創価の「人間革命」の群像は、時代の混迷の闇を赫々と照らし晴らしております。今や、無数の老若男女から敬愛され、信頼される民衆の大学と聳え立ちました。
2020年の年頭より突如、世界を襲った、新型コロナウイルスの感染拡大にあっても、全学生の健康と安穏を厳然と守りながら、柔軟にオンラインでの講義を開始し、世界各地の留学生たちと共に、大学教育の新しい可能性を開いてくれています。
この半世紀、一切を乗り越えてきた我ら創大は、これからの前途にまたいかなる苦難が立ちはだかろうとも、共に励まし、共々に一切を勝ち越えてまいりたい。
そして、人類全体の「創造的生命」の太陽を明々と発光させゆく、新たなルネサンスの揺籃となっていきたい――こう強く願ってやまないのであります。
最強の人間の結合
第3の宝は、人類を結ぶ「地球民族主義」のネットワークです。
「大学は人間のつくった制度の中で最も永続するものの一つである」(R・N・スミス著『ハーバードの世紀』村田聖明・南雲純訳、早川書房)
これは、私が2度にわたってお招きいただき講演を行った、アメリカのハーバード大学の歴史に輝くエリオット学長の至言であります。私も全く同感であります。
と同時に、私が愛してやまない宿縁の留学生たちと一緒に、一つ加えさせていただきたい大学の意義があります。
すなわち――
「大学は人間をつなぐ結合の中で最も普遍にして力強いものである」と。
冷戦下の世界にあって、わが創大は日本と中国、日本とロシア、中国とロシア、さらには日本とキューバ、アメリカとキューバ等々を、イデオロギーや体制を超えて、教育・文化の橋で結ぶ貢献を果たしてきました。
お隣の韓国をはじめアジア・オセアニア、北中南米、ヨーロッパ・中東、そしてアフリカと、今や60の国々や地域を超える大学とネットワークを結んでおります。
戦後、いちはやく「地球民族主義」の理念を示された戸田先生の不二の弟子として、そして創大創立者として、私がひときわ深き友情と信頼を結び合ってきた世界の諸大学の数も400に及びます。これも全て、スーパーグローバル大学の使命と責任を担い立つ創大に託しゆく絆であります。
頼もしいことに、創大は国連と世界の大学を結ぶ「国連アカデミック・インパクト」の一員として、「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進に雄渾に取り組んでいます。
創大は、国籍はもとより、人種も文化も宗教も、あらゆる差異を超えて、「尊厳なる生命」という究極の共通の基盤に立ち、一人一人の若人と互いに信じ敬い、学び合い、啓発し合う世界市民の連帯を、限りなく築き広げていくのであります。
人類が深刻な分断と亀裂の危機にある現代だからこそ、創価学園、アメリカ創大をはじめ世界の姉妹校とも連携を強めながら、何ものにも引き裂かれない教育の結合で前進してまいりたい。断固としてたゆまぬ、この一歩一歩の中にこそ、平和の実像があると、私は信じてやみません。
この地球を照らせ
ここで私は、今この時に創価大学で学んでくれている、奇しき縁の学生の皆さんに、重ねて深甚の感謝を申し上げます。
「過去の因を知らんと欲せば其の現在の果を見よ 未来の果を知らんと欲せば其の現在の因を見よ」(御書231ページ)であります。
頼もしき創価の青春のスクラムは、コロナ禍にあっても、一歩も退かず、我らこそ若き創立者なりとの、草創の先輩方に勝るとも劣らない誉れと自覚に燃えて、新たな探究と価値創造に挑み、世界の学徒の希望と輝いてくれています。この現在の学生の皆さんの英姿にこそ、創価大学という生命体の50年の栄光が結晶しております。そしてまた、限りなき未来の凱歌が約束されているのであります。
忘れ得ぬ第1回の卒業式の折、私は、生涯「創価大学の一会 儼然として未だ散らず」の心で生き抜こうと盟約を交わしました。
いつ、いずこにあろうとも、創価の師弟、創価の学友は、一体不二です。私は、わが命である創大生の健康と成長と幸福を、永遠に強盛に祈り抜いてまいります。
ともあれ、遠大なる未来を思えば、創立50周年も、いまだ草創期であります。万年の彼方まで「従藍而青」の光彩を放ちゆく創価教育の真価は、“いよいよ、これから”と心新たに誓い合おうではありませんか!
さあ、創価の学友よ! 不二の同窓よ! 貢献と勝利の人生を、威風も堂々と飾っていってくれ給え! 永遠に私と一緒に!
この地球の
幸と平和の
ルネサンス
創価の太陽よ
民衆と照らせや
大好きな「創大学生歌」を、共に口ずさみ、生命に轟かせつつ
2021年4月1日2日〈4.2創価大学創立50周年記念特集〉
2020年4月25日
第1661回
大転換期は必然!
<創価一貫教育の目指すもの>
創価一貫教育完成の祝賀会は、参加者全員の万歳三唱をもって終了した。山本伸一は、再び東京創価小学校に戻り、幼稚園から大学までの教員の代表と懇談会をもった。
彼は、ここでも、創価中学・高校の開校から十年、建設期の苦闘を共に担い、人間教育の土台を築いてくれた教員たちに、心から御礼と感謝の気持ちを伝えた。
そして、教育にかける自分の真情を語っていった。
「人類の未来のために、最も大切なものは何か。それは、経済でも政治でもなく、教育であるというのが、私の持論です。
人類の前途は、希望に満ちているとは言いがたい現実があります。長い目で見た時、今日の繁栄の延長線上に、そのまま二十一世紀という未来があると考えるのは間違いです。社会の在り方、さらには、文明の在り方そのものが問われる大転換期を迎えざるを得ないのではないかと、私は見ています。
したがって、深い哲学と広い視野をもち、人類のため、世界の平和のために貢献できる人間を、腰をすえて育て上げていく以外に未来はありません。そのための一貫教育です」
伸一は、教員たちに、一貫教育を行うことの、本当の意味をわかってほしかった。
教育は、未来を見すえることから始まる。
「いよいよ創価教育の流れは、二十一世紀を開く人間教育の第二期に入ります。各校を盤石なものにしていくうえで、いちばん大切なことは団結です。団結には、中心となる心棒が必要です。
どうか校長や学長など、中心者を団結の心棒とし、力を合わせて前進し、発展、向上させていくよう、よろしくお願いします」
ここで彼は、教職員は、中心者を守り、支えるように望む一方で、中心者には、教職員が、どんなことでも言える、和気あいあいとした場をつくっていくように要望した。
さらに、平和と文化を推進する二十一世紀の指導者を育てるという、″創立の原点″を忘れないでほしいと、訴えたのである。
新・人間革命 27巻 若芽