2017年4月19日20日
冥の照覧
<私は永遠に忘れません。
学会員に尽くし抜いていく。
それが私との共戦です。>
山本伸一が激励した人のなかに、佐久から来た柳坂亘・志津夫妻がいた。二人は、研修道場の庭の整備のために、伸一の滞在中も、連日のように通って来ていたのである。
亘は、六十歳前後の造園業を営む壮年であった。伸一は夫妻に言った。
「研修道場を大切にしてくださる柳坂さんの思いは、私の心でもあります。
私は、ここを訪れた方々が、英気を養い、信心を錬磨し、最高の思い出をつくり、決意を新たにして、各地の広宣流布に邁進していっていただきたいと念願しています。
そのためには、整備された、すがすがしい環境が大事です。お二人は、その重責を担ってくださっている。尊いことです。
その労苦は、仏法の因果の理法に照らして、無量の功徳、大福運になっていくことは間違いありません。どうか、いつまでもお元気で、研修道場を守ってください」
記念撮影が終わったのは、午後四時近かった。撮影回数は三十回ほどになり、一緒にカメラに納まった人は三千人を超えた。
伸一は、記念撮影の準備・運営にあたった役員の青年たちに語りかけた。
「ありがとう! 参加者は皆、喜んでいたよ。皆さんのおかげです」
そして、駐車場の草刈りなど、陣頭指揮を執っていた長野県の男子部長に言った。
「雨の中、泥まみれになって草刈りをしていた姿を、私は永遠に忘れません。学会員に尽くし抜いていく。それが私との共戦です。
長い人生には、失敗も、挫折もあるかもしれない。しかし、それでも前へ進むんです。いちばん大事なことは、何があろうが、生涯、学会から離れず、同志のため、広布のために、献身していくことです。
自分が脚光を浴びようとするのではなく、冥の照覧を信じて、広宣流布に生き抜くんです。それこそが本当の勇気です。
その時に、自身が最も輝くし、その人こそが、人生の最高の勝利者です。私は、みんなのことを、じっと見続けていきます」
小説『新・人間革命』語句の解説
◎冥の照覧/「冥」とは、奥深く、目に見えないことで、ここでは凡夫には見えない仏神をいう。仏や諸天善神が、人びとの一念や行動をことごとく知っていること。
〈小説「新・人間革命」〉 雌伏 二十一 2017年4月18日