2022年4月29日30日
第1987回
仏法のヒューマニズムとは?
<大宇宙それ自体が一つの生命体と見て
その調和の上に、人間の幸福を創造する>
さらに、もう一人の重役が伸一に聞いた。
「さきほど、あなたは『仏法のヒューマニズムの哲理』という言い方をされましたが、ヨーロッパにもヒューマニズムの伝統があります。それと、仏法のヒューマニズムとは、どこが違うのでしょうか」
伸一は答えた。
「大変に鋭い質問です。
人間を大切にするという点では同じですが、
仏法では、
人間が地上の支配者であり、
そのほかの生物や自然を、
征服すべき対象とは考えません。
大宇宙それ自体が一つの生命体であり、
人間もそのなかで生きる一個の小宇宙ととらえます。
そして、人間も、他の生物も、
また、自分を取り巻くあらゆる存在が、
互いに依存し、支え合い、
調和することによって、
生を維持していると考えます。
事実、もし人間が、
自らがこの世の支配者であるかのように慢心し、
強大な科学技術の力をもって、
すべての森林を伐採し、
動物を絶滅させ、
海を汚染し、
自然を破壊していけば、
どうなるでしょう。
それでは、人間自身が、
生命を維持すること自体が、
困難になってしまう。
つまり、自分と、他の人びと、
また、周囲の動植物など、
人間を取り巻くあらゆる環境を
対峙的にとらえるのではなく、
一つの連関と見て、調和の上に、
人間の幸福を創造していくことが、
仏法のヒューマニズムの一つの特徴といえます。
その意味では、
宇宙的ヒューマニズムといってもよいかもしれません」
質問した重役が感嘆して言った。
「私の知人に生態学者がおりますが、今の自然との連関という話は、最近の生態学の研究と、非常に近いものがあるようです。彼も、山本会長と同じ見解を語っていました」
「そうですか。さらに、科学の研究が進めば、仏法の真実が証明されていくと思います。仏法と科学とは、決して相反するものではなく、むしろ、科学を人間の幸福のために、正しくリードしていくのが仏法です」
<新・人間革命> 第5巻 開道 19頁~21頁