トルストイ

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2022年4月7日

第1962回

トルストイ

「何のために生きるのか」

 

<我が生を何に使うか!>

 

 さらにトルストイは、

 「誤った信仰」は

 人間に害毒をもたらすと述べ、

 こう断じていた。

「人々が邪悪な生活を送るのは、

 彼らが真理を信じないで、

 虚偽を信ずるからにすぎない」

 (「我等は何の為めに生きるか」、『トルストイ全集』18〈深見尚行訳〉所収、岩波書店)

 

 虚偽は不幸の元凶である。

 そして、トルストイは結論している。

「もしも生が幸福であるならば、

 生の必然的条件である死もまた

 幸福と言わねばならない」(同前)

 

 仏法は「生死不二」であり

 「生も歓喜、死も歓喜」と教えている。

 

 悔いなき勝利の「生」があってこそ、

 安穏な「死」が訪れる。

 「死」は新たな「生」への準備期間となる――。

 

 世界文学の巨匠もまた、

 こうした哲学を志向していたのであろう。

 

 そこで大事なのは

 「何のために生きるのか」という一点である。

 

 トルストイは論じている。

「貴方は訊ねる、

 『人生の目的如何、

 何のために人間は生くるや、

 換言すれば、

 何のために私は生きて居るか?』と」

「宗教、真実の宗教は、

 この問題に対する解答に

 外ならないのである」(同前)

 

 トルストイが学んでいた、

 古代ローマの哲学者セネカは、

 こう洞察している。

「生きているというのは、

 多くの人々の役に立つ人のことであり、

 自分自身を役に立てる人のことです」

 (『道徳書簡集』茂手木元蔵訳、東海大学出版会)

 

 妙法という人間主義の哲学を掲げ、

 多くの友の幸福のため、

 社会のために日々、

 献身の行動を続ける。

 このセネカの言葉のとおり、

 最高に栄えある青春の道を進んでいるのが、

 青年部の皆さんなのである。

 

2005.2.3第二総東京最高協議会

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2022年4月6日

第1960回

トルストイ

「善を行なうことこそ

幸福への唯一の行為」

 

 ある時、戸田先生が私に「トルストイは読んでいるか」と尋ねられた。

 私は、「読んでおります」とお答えした。

 「トルストイの文学は膨大だから、全部、読むのは大変だろう」

 こう言われる先生に、私は申し上げた。

 「おっしゃるとおりです。しかし、トルストイの全集の中の有名な作品は、だいたい、目を通したつもりです」

 すると先生は、「その中から、心に残った一節、また今、読んでいる一文を、あげてみてくれ」と命じられた。

 私は問髪を入れず、記憶するトルストイの箴言を、紹介させていただいたのである。

 

 戸田先生は本当に厳しかった。

 徹底して私を鍛錬してくださった。

 師匠に対して、いい加減なことは言えない。

 だからこそ、私は真剣に勉強した。

 さまざまな報告も、

 正確に、慎重に行わねばならない。

 嘘や間違いを言えば、

 そこから狂いが生じてしまう。

 私は、師匠に対して、

 そういう姿勢で臨んできたのである。

 

 ここで、トルストイの言葉を、

 わが青年部の皆さんに贈りたい。彼は記している。

「幸福は、己れ自ら作るものであって、

 それ以外の幸福はない」(「我等は何の為めに生きるか」、『トルストイ全集』18〈深見尚行訳〉所収、岩波書店)

 そのとおりである。

 では、幸福をつくるためには何が大切か。

 トルストイはつづった。

「善を行なうことこそ、

 間違いなくわれわれに幸福を与える唯一の行為である」

「真の幸福は、

 けっして一挙に獲得されるものでなく、

 不断の努力によってのみ獲得される」(『文読む月日』北御門二郎、筑摩書房)

 善を為すことだ。忍耐と持続が大事である。

 

2005.2.3第二総東京最高協議会

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2022年3月31日

第1952回

トルストイ

(6)

 

<最後には、人間主義が勝利する。>

 

 日蓮大聖人が、

 御書に繰り返し引かれた法華経薬王品の一節がある。

 それは、

「この大法を全世界に広宣流布して、

 断絶させることなく、

 悪魔、魔民、諸天(第六天の魔王など)、

 悪い竜、夜叉、

 鳩槃荼くはんだ(人の精気を吸う変幻自在の悪神)などに、

 つけいるスキを与えてはならない」

 という、釈尊の厳命であった。

 

 この仏勅のままに、わがSGIは、世界広宣流布を成し遂げてきた。

 嫉妬や忘恩に狂った、ありとあらゆる悪人や障魔を敢然と打ち破り、末法万年へ妙法を伝えゆく、限りない令法久住の道を開いてきた。

 釈尊も、大聖人も、どれほど讃嘆されていることであろうか。

 

 トルストイは、

 戦争という悪をなくそうと戦った。

 そして人々に、こう呼びかけた。

「我等の手にあるのは、ただ一つであるが、

 しかしその代り、

 世界に於て最も有力なる武器――真理である」

 

 それゆえに

「我等の勝利は、

 朝暾ちょうとん(=朝日)の光が

 夜の闇黒に打克つが如くに、

 疑い無きものである」。

 (「ストックホルム平和会議演説草案」深見尚行訳、『トルストイ全集』20所収、岩波書店)

 最後には、人間主義が勝利する。

 否、断じて勝利しなければならない。

 

 トルストイの精神に続いた、

 アメリカの非暴力の指導者キング博士は断言した。

「悪は最後には、

 善の容赦ない強い力によって滅ぼされるのだ」

 (『汝の敵を愛せよ』蓮見博昭訳、新教出版社)

 

 善とは

 「民衆の側に立つ」ことだ。

 「生命の尊厳を打ち立てる」ことだ。

 

 われらには、

 無敵の「法華経の兵法」がある。

 この一年を見事に勝ちきれば、

 次の五十年、百年の大前進を決しゆく、

 新しい創価学会が完壁にできあがる。

 

2005.1.7第四十五回本部幹部会、婦人部幹部会他

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2022年3月30日

第1951回

トルストイ

(5)

 

<自己の無限の力は、

他者への幸福のために尽くすことで

解放される!>

 

 

 トルストイは論じている。

「人間には精神だけでなく、

 肉体的にも無限の力が

 秘められていると私は信じている。

 しかし、同時に、

 この無限の力を抑える恐るべき

 ブレーキもついているのである」

 

 では、無限の力を抑える

 「ブレーキ」とは何か。

 それは、

 「自分はここまでしかできない」とか、

 「人間は弱い存在だ」といった、

 自己についての固定観念である。

 そうトルストイは考えた。

 

 これは、「色心不二」「一念三千」

 という生命変革の法理を説く

 仏法の人間観とも共鳴する思想といえよう。

 

 あきらめの心、

 弱い心を打ち破るのだ。

 大事なのは、

 勝利への断固たる一念である。

 

 自分自身の中にある「無限の力」

 ――それは、

 他者の幸福のために尽くす行動

 によって解き放つことができる。

 そこにこそ、真の幸福がある。

 これが、トルストイの確信であった。

 

 まさに、

 私たちの日々の学会活動である。

 人に尽くす行動が、

 みずからの思いがけない可能性を広げる

 ――このことは、

 皆さんが深く実感しておられることであろう。

 

 私が対談した、

 カナダの世界的平和学者ラパポート博士は、

 次のように語られていた。

「世界の平和運動の多くは

 核兵器と戦争への″恐怖″から

 生まれたものですが、

 SGIは

 ″平和とは人々の喜びと幸福が

 実現することであると、

 一歩深い次元から平和運動を進めています。

 このような平和の団体は、

 世界に一つしかありません!」

 (「聖教新聞」二〇〇一年七月七日付)

 

 「人間革命」の哲学を掲げ、

 幸福と平和の連帯を広げるSGIに、

 世界の知性が寄せる期待は、

 ますます大きい。

(つづく)

 

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2022年3月29日

第1950回

トルストイ

(4)

 

<″必ず勝っと決心した者が勝つ″>

 

 トルストイの『戦争と平和』から、

 三点目について述べたい。

 それは、これまで何度も論じてきたことであるが、

 

「『断じて勝つ』という執念を持て!」という

「絶対勝利の哲学」である。

 

「戦いに勝つのは、

 必ず勝とうと堅く決心した者だ」

 (米川正夫訳、岩波文庫)

 

 これは、押し寄せるナポレオンの大軍との決戦――「ボロジノの戦い」を前に、主人公の一人であるアンドレイ公爵が語った言葉であるが、人生の万般に通ずる哲学といえよう。

 この戦いのなかで、別の登場人物は語る。

 

「勝負の決しがたい場合には、

 常に根気の強い方が勝利者であります」(同前)

 

 人生にあっても、

 平和をめざすわれらの戦いにあっても、

 何があろうと、

 断じて勝つと、

 固く、強く、決めた者が勝つ。

 

 この一点を、

 とくに青年部の皆さんは

 深く生命に刻んでいただきたい。

 これこそ、

 勝ち抜く指導者の

 根本原理であり、法則であるからだ。

 

 深き決意が、祈りとなる。

 それが勝利への

 知恵と行動を生みだしていくのである。

 

 トルストイは、

 みずからの人生の劇においても、

 強大な宗教権力から″破門″されるという

 大迫害に断じて屈しなかった。

 世界を友とし、味方としながら、

 忍耐強く、

 一切に打ち勝っていった。

(つづく)

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2022年3月28日

第1949回

トルストイ

(3)

 

「生命尊厳の善なる連帯を広げよ!」

 

 二つ目のポイントは、

 「生命尊厳の善なる連帯を広げよ!」という点である。

 

 トルストイは、死刑判決を受けた、

 ある青年の命を救うために奔走していた。

 そのみずからの行動について、

 トルストイがつづった手紙には、

 こう記されている。

「各人の生命は神聖なものであって、

 一人の人間が

 他の生命を奪う権利なぞあり得ない」

 (ビリューコフ『大トルストイ』1、原久一郎訳、勁草書房)

 

 私も、まったく同感である。

 現代世界における、

 さまざまな不幸や悲惨の元凶の一つは、

 生命の軽視にある。

 すべての生命の尊厳性を

 説く仏法の哲理を、

 今こそ強く世界に発信していかねばならない。

 

 トルストイは、

 仏教思想から強い影響を受け、

 生命の極理を説いた「法華経」も読んだ、

 と言われている。

 生命の永遠性についても

 深い思索をめぐらせていた。

 

 十一年前(一九九四年)、

 私は、トルストイも学んだことがある

 モスクワ大学を訪問し、

 同大学で二度目の講演を行った。

 その中でトルストイの哲学にも言及した。

 

 その折、

 講評をしてくださったパーニン哲学部長が、

 「トルストイも最終的には

 仏教に解決の方途を

 見つけようとしていたようだ」

 と語っておられたことも忘れられない。

 

悪を圧倒する正義の連帯を拡大

 『戦争と平和』では、

 新しい社会の建設に挑む

 主人公の一人・ピエールが、

 「いたる所で全力をあげて

 邪曲と痴愚とを追及し、

 才能と善徳とに保護の手をのべ、

 価値ある人々を塵芥の中より選び出して」

 (北御門二郎訳)、糾合するべきだと訴えている。

 

 ″悪人たちの結託を圧倒しゆく、

 正義の連帯を拡大せよ!″――これこそ、

 『戦争と平和』の最終章における

 重要な主題なのである。

 

 ピエールは言う。

 「もし悪人たちが団結して力をふるうならば、

 善人たちもそうしなければならない」

 「善を愛する人々よ、互いに手をつなごう、

 そして善の実践をもって我らの旗印としよう」(同前)

 

 一九九一年六月、私は、トルストイの令孫であるセルゲイ・トルストイ氏と、お会いした。フランスのユゴー文学記念館の開館式においてであった。氏が「世界中の人々を結び合わせるSGIの行動は、祖父(トルストイ)の思想と理念に一致しています」と、心からの共鳴を語ってくださったことが思い出深い。

 (=この折、「トルストイ友の会」会長である氏から、池田先生に、同会の名誉会員証が手渡された。このほか池田先生には、ロシアの国際児童基金協会から「レア・トルストイ国際金メダル」、モスクワ大学からは中央図書館で重宝図書として所蔵されていた「トルストイ全集全九十巻」など、トルストイゆかりの賞や品が贈られている)

(つづく)

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2022年3月27日

第1948回

トルストイ

(2)

 

「歴史を動かす力」>

 

 その一つは、

 「歴史を動かす力」についての洞察である。

 トルストイは、

 一握りの権力者のみが脚光をあびてきた

 従来の歴史観に大革命を起こした。

 

 一人一人の無名の民衆にこそ

 光をあてるべきであり、

 その無数の行動の結集が

 歴史を創りあげていくと、

 強く訴えたのである。

 

 トルストイはみずからの人生において、

 権力者に対して

 獅子のごとく戦いぬきながら、

 無名の民衆に尽くし、

 けなげな青年を育てていった。

 

 トルストイの『戦争と平和』という大叙事詩

 ――その真の英雄はだれか?

 若き日に、

 トルストイから真心の激励を受けた

 フランスの作家ロマン・ロランは論じている。

 「その真の英雄は民衆である」

 (『トルストイの生涯』蛯原徳夫訳、岩波文庫)

 

 私もまた、

 声を大にして、こう宣言したい。

「『広宣流布』という

 平和と文化の大叙事詩

 ――その真の英雄は、

 真剣にしてまじめな

 学会員の皆さまである!」と。

 

 わが学会員の

 勇敢にして誠実な行動によって、

 社会からの信用はいちだんと深まり、

 広がっている。

 創価の時代へ、

 歴史は大きく動き始めている。

(つづく)

 

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2022年3月26日

第1946回

トルストイ

(1)

 

「戦争の目的は人殺しだ」>

 

 

 さて、大文豪トルストイの『戦争と平和』といえば、″世界文学の頂点に立つ大叙事詩″として、あまりにも有名である。

 トルストイは当初、この作品を「一八〇五年」という題で書き始めた。この年から始まる、ナポレオン軍とロシアの戦乱の歴史が物語の柱となっているからだ。

 

 トルストイは『戦争と平和』の中で、

 戦争とは

「人間の理性と、人間のすべての本性に反する事件」

 (『戦争と平和』中、北御門二郎訳、東海大学出版会)

 だと書いている。

 

 さらに

戦争は愛想事じゃなく、

 この世で最大の醜悪事なんだ」、

 また「叡知はもともと暴力を必要としない」(同前)

 ともつづっている。

 

 文豪の眼は、

 権力者らのごまかし、

 卑劣な虚偽を突き破って、

 真実を鋭く射貫いていた。

 

 トルストイは、

 いかなる言葉でとりつくろっても、

 どんな理由で正当化しようとも、

 戦争とは人間の殺しあいにほかならないことを、

 だれよりも厳しく認識していた。

 「一体戦争とは何か?(中略)

 戦争の目的は人殺しだ」(同前)と。

 

 トルストイが見つめた一八〇五年から、

 今年でちょうど二百年(当時)。

 

 この二十一世紀を、

 「戦争」と「暴力」の流転ではなく、

 「平和」と「対話」の世紀へと

 断じて築きあげていかねばならない。

 そして、今年二〇〇五年こそ、

 その大きな転換の始まりの一年としたい。

 

 この深き決意をこめて、

 私は、トルストイの最高傑作を中心に、

 三つのポイントについて訴えたい。

 

(つづく)

世界広布新時代

創立100周年へ

2030年 

 

世界青年学会

開幕の年

(2024年)

2013.11.18

広宣流布大誓堂落慶

更新日

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第2318回

 

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