ターゲット
1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
2022年12月14日
〈SDGs×SEIKYO〉
利他の精神に基づく新たな文明を
ノーベル平和賞受賞者
ムハマド・ユヌス博士
貧困ゼロの世界をつくる
1日当たりの生活費が2・15ドル(約300円)未満で暮らす「極度の貧困層」は、本年末の時点で6億8500万人に上ると推計されています。バングラデシュの経済学者であり、2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士は、長年にわたり、貧困の撲滅と女性のエンパワーメント(能力開花)に取り組んできました。SDGsの目標1には「貧困をなくそう」、目標5には「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。人間の可能性をどこまでも信じ抜き、地球的課題に立ち向かい続ける博士に、より良い未来を築くための方途を聞きました。(取材=サダブラティまや、山科カミラ真美)
◆信頼によって築かれた銀行
――ユヌス博士は、1983年に貧困者を対象とした銀行を設立しました。ベンガル語で「村の銀行」を意味する、グラミン銀行です。きっかけは、74年にバングラデシュで発生した大飢饉。当時、南東部のチッタゴン大学で経済学部長を務めていた博士は、飢えに苦しむ人々の現実と、自身の教える美しい経済理論の間に大きな矛盾を感じ、貧困問題に携わるようになりました。
飢饉が起きた時、私は貧困の実態をつかみたくて、大学から近いジョブラ村に赴きました。そこで出会ったのが、悪徳な金貸しから借りたわずかな額を返済するために、奴隷のように働く女性たちでした。
何とか彼女たちを救いたいとの、やむにやまれぬ思いが、銀行設立につながりました。
始まりは小さなことです。自分のポケットマネーから、女性たちが借りていた同等の金額を貸し付け、借金を肩代わりしたのです。
それが次第に広がり、「マイクロクレジット」と呼ばれる、無担保で少額の融資を行うアイデアに発展しました。
本来、お金に困っている人を助けるのが銀行です。しかし、既存の経済システムの中では、資産も技術も持たない極貧層は、完全に対象から外されていた。
バングラデシュの銀行に、貧困者への融資をお願いしましたが、皆が鼻で笑い、真剣に取り合ってはくれませんでした。
グラミン銀行の特色は、お金を借りる際、担保や法的な文書を必要としないことです。従来の銀行からは、あらゆる批判を受けました。
「貧困者に無担保で融資なんて、あり得ない」「ビジネスは都市部でしか成立しない」「女に金は扱えない」……。そんな“常識”を突き付けられるたびに、正反対の方法をことごとく実践してみたのです。
女性たちがきちんと返済できるのか、私にも確信はありませんでした。でも、生まれた時から、人間以下の扱いを受けてきた彼女たちに、“私もできる!”という自信を持たせてあげたかった。どのような可能性があるのかを試さずして、新しい未来は築けません。
現在、グラミン銀行は、バングラデシュ国内だけで1000万人以上に融資をしており、うち98%が女性です。返済率はほぼ100%。こうしたグラミンふうのプログラムは、アメリカをはじめ、世界中に広がり、多くの人を窮状から救っています。「不可能だ」と言った者たちの言葉を見事に覆すことができたのです。
◆女性が立ち上がれば未来は変わる
――グラミン銀行は、貧困の撲滅だけでなく、女性の地位向上やエンパワーメントにも多大な貢献をしてきました。貧困のない世界をつくる上で重要な、女性の役割を教えてください。
戦争や貧困の中で、最も犠牲となるのは女性です。彼女たちは、わずかな食べ物を夫や子どもに譲り、自分は我慢します。社会的、政治的、経済的に脆弱な立場に置かれるのは、いつも女性なのです。
私は、グラミン銀行の事業を通して、女性に融資をした方が、真っ先に家庭や子どもに利益がいくことに気が付きました。男性は、すぐに自分のために使ってしまう傾向があるからです。
女性たちはチャンスさえあれば、男性以上に努力をします。惨めな境遇から抜け出したいとの意志が強く、苦労を厭わない。失敗しても諦めない。女性を自立させることは、社会全体の貧困と戦うことにつながるのです。
また、グラミン銀行では、借り手の子どもたちが、明るく価値ある未来を築けるよう、教育ローンも提供してきました。
母親は学校に行けず、読み書きができなかったとしても、次の世代が同じ道をたどってはいけません。この制度によって、大学に進学し、修士課程や博士課程に進んだ人もいます。エンジニアや医師になった人もいます。人生を切り開く力は、その人の中にあり、誰かにすがって生きていく必要はないことを証明しています。
私は、こうした現実を目の当たりにするたびに、環境さえ整っていれば、母親だって、子どもと同じように自身の才能を開花できたはずだ、と思います。そして、“貧困は決して貧しい人々が生み出したものではない。貧困の責任は貧しい人々にあるのではない”との確信を、ますます強めていったのです。
◆皆が幸せになるビジネス
――2006年、長年の功績が認められ、博士とグラミン銀行はノーベル平和賞を受賞しました。博士はさらに、貧困の枠を超えて、社会のあらゆる課題解決を目的とする「ソーシャルビジネス」の概念を提唱し、世界に展開しています。
貧困問題は、ずっと私の人生の中心を占めてきました。ですが次第に、医療、環境、雇用など、貧困と深い関わりのある分野にも目を向けるようになりました。
ソーシャルビジネスは、企業として存続できる最低限の収益を得ながらも、地球規模の問題に取り組むことができる、いわば、利己と利他の両面を生かしたビジネスです。
例を挙げましょう。06年にグラミンとフランスの食品企業ダノンは、バングラデシュに共同で会社を立ち上げました。ダノンが、栄養失調に苦しむ子どもたちのために、ビタミンや亜鉛などを含んだ、栄養価の高いヨーグルトを提供するためです。
また近年では、大企業がソーシャルビジネスに方向転換する事例も増えています。その一つが、アウトドア用品を販売している、アメリカのパタゴニア社です。以前から、売り上げの1%を環境保護に充ててきましたが、同社が保有する株式の全てを、環境保護団体などに譲り渡す決断をしました。
日本でも、ソーシャルビジネスを実践する企業がさらに増えることを願っています。
――人類が直面する諸問題の解決を目指すソーシャルビジネスの理念は、創価学会の牧口常三郎初代会長のビジョンと深く響き合っていると感じます。牧口先生は、帝国主義や植民地主義が世界中にはびこる時代にあって、「人道的競争」という概念を提唱しました。いわば、自分の幸福のみを追求し、他者を顧みない「対立的競争」ではなく、自他ともの幸福を目指す「協調的競争」を生き方の軸に据えるべきだと訴えたのです。
素晴らしい考えです。それは、われわれの活動の原動力となっている精神そのものであり、全面的に賛成します。
資本主義は、人間を、利益のみを追求するロボットのような存在に仕立て上げてしまいました。お金以外は何も見えない。何も感じない。お金をもうけることが全て――こうした資本主義の在り方こそが、人類が直面している危機の根本原因であると私は考えています。
牧口氏が主張したことは、同時に私たちも掲げていることですが、人間としての価値を再発見することではないでしょうか。自身の行動が、他者の幸福に役立っているという喜びや、実感を取り戻すことだとも言えます。
残念ながら、既存の経済システムは、こうした人間の美徳にふたをし、利己的な側面ばかりに焦点を当ててしまいました。しかし、これは全く誤った人間像です。確かに、人間には利己的な面もありますが、それ以上に、他者のために尽くし、そこに喜びを見いだせる存在です。
未曽有の新型コロナウイルスが世界を覆った時、人々は家に閉じこもり、職を失い、貧困層はますます窮地に追いやられました。一方、ワクチンは豊かな国が多くを持っていってしまった。
全ての経済活動が一瞬にして停止し、歯車を再び回転させようと、膨大な支援金を投じる人もいました。
しかし、私は申し上げたのです。
「経済という機械が停止したのはいいことだ。
逆戻りさせてはいけない。
今こそ、新しい経済の仕組みを、
一からつくり直すチャンスだ」と。
感染症、地球温暖化、高い失業率など、さまざまな課題を抱える現代にあって、ソーシャルビジネスは、これまで以上に必要とされています。
古い道をたどっても、古い結果にしか結び付きません。新たな終着点をつくりたければ、新たな道を開くしかないのです。
◆人間に内在する無限の創造力
――博士は常々、今の青年は、前の世代よりも、他者に貢献したいという気持ちを強く持っていると話されています。2014年に東京の創価大学を訪問された時も、若者の可能性に大きな期待を寄せ、学生たちと語り合ってくださいましたね。
ええ。私はどこへ行っても若い人たちと語り合うことを心掛けてきました。彼らの考えは柔軟で広く、汚れのない瞳は、善悪を鋭く見分けることができます。一方、古い世代の人々は、どうしても従来のやり方に固執し、安住してしまう。その姿勢が、環境汚染や貧困をはじめとする、地球的課題を生み出し、助長する要因になっているとも気付かずに……。
人類が求める世界をつくれるのは、未来ある青年です。そこで私は彼らに3つのゼロの世界――「貧困ゼロ」「失業ゼロ」「二酸化炭素排出ゼロ」――を柱とした、新しい文明の構築を託したい。
今の文明は欲望で形作られています。このままでは、私たちは滅んでしまうでしょう。そうなる前に、次の文明を築かなければなりません。それは、「分かち合い」や「互いを思いやる心」といった価値観で彩られるべきです。
その実現のためには、何が必要か。まずは、生まれながらにして自身に内在する「無限の創造力」を、深く自覚することから始めてみてください。
多くの教育の現場では、良い大学や仕事に就くことばかりに重点を置き、青年たちに理想とする世界をつくれることを教えません。
でも、先ほどお話しした女性の例でも明らかなように、人間には、どんなことも可能にする偉大な力が備わっている。不可能なことなど、何もありません。
あなたの理想とする世界、目指すべき世界を心に強く思い描いてください。想像さえできれば、それはもう、実現へと向かっているのですから。
ムハマド・ユヌス 1940年生まれ。バングラデシュの経済学者、社会活動家。ダッカ大学を卒業後、米ヴァンダービルト大学で経済学博士号を取得。72年に帰国後、チッタゴン大学経済学部長を務める。祖国で起きた大飢饉をきっかけに、マイクロクレジット(無担保少額融資)を導入した、グラミン銀行を83年に創設。2006年にノーベル平和賞を受賞。その他、マグサイサイ賞、米大統領自由勲章など、受賞・受勲多数。著書に『ムハマド・ユヌス自伝』『3つのゼロの世界』(早川書房刊)などがある。
ターゲット
2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。
2.2 5歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。
2.3 2030年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。
2.4 2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。
2.5 2020年までに、国、地域及び国際レベルで適正に管理及び多様化された種子・植物バンクなども通じて、種子、栽培植物、飼育・家畜化された動物及びこれらの近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意に基づき、遺伝資源及びこれに関連する伝統的な知識へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を促進する。
2.a 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発及び植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。
2.b ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。
2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の適正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易にする。
ターゲット
3.1 2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する。
3.2 すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。
3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。
3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。
3.5 薬物乱用やアルコールの有害な摂取を含む、物質乱用の防止・治療を強化する。
3.6 2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7 2030年までに、家族計画、情報・教育及び性と生殖に関する健康の国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関する保健サービスをすべての人々が利用できるようにする。
3.8 すべての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9 2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。
3.a すべての国々において、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b 主に開発途上国に影響を及ぼす感染性及び非感染性疾患のワクチン及び医薬品の研究開発を支援する。また、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)及び公衆の健康に関するドーハ宣言に従い、安価な必須医薬品及びワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護及び、特にすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を最大限に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c 開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において保健財政及び保健人材の採用、能力開発・訓練及び定着を大幅に拡大させる。
3.d すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。
ターゲット
4.1 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
4.2 2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
4.3 2030年までに、すべての人々が男女の区別なく、手頃な価格で質の高い技術教育、職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。
4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
4.5 2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
4.6 2030年までに、すべての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。
4.7 2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。
4.a 子ども、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、すべての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。
4.b 2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、ならびにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。
4.c 2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員養成のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。
ターゲット
5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。
5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。
5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。
5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。
5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。
5.b 女性の能力強化促進のため、ICTをはじめとする実現技術の活用を強化する。
5.c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。
ターゲット
6.1 2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。
6.2 2030年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女子、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。
6.3 2030年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加により、水質を改善する。
6.4 2030年までに、全セクターにおいて水の利用効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。
6.5 2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。
6.6 2020年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼などの水に関連する生態系の保護・回復を行う。
6.a 2030年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術など、開発途上国における水と衛生分野での活動や計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。
6.b 水と衛生に関わる分野の管理向上への地域コミュニティの参加を支援・強化する。
ターゲット
7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。
ターゲット
8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。
8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。
8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。
8.4 2030年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。
8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。
8.6 2020年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。
8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
8.9 2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。
8.1 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。
8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。
8.b 2020年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)の仕事に関する世界協定の実施を展開・運用化する。
ターゲット
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。
9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。
9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。
9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。
ターゲット
10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
10.c 2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。
ターゲット
11.1 2030年までに、すべての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。
11.2 2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
11.3 2030年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、すべての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画・管理の能力を強化する。
11.4 世界の文化遺産及び自然遺産の保護・保全の努力を強化する。
11.5 2030年までに、貧困層及び脆弱な立場にある人々の保護に焦点をあてながら、水関連災害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
11.6 2030年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
11.7 2030年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。
11.a 各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。
11.b 2020年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組2015-2030に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。
11.c 財政的及び技術的な支援などを通じて、後発開発途上国における現地の資材を用いた、持続可能かつ強靱(レジリエント)な建造物の整備を支援する。
ターゲット
12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取り組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。
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〈SDGs×SEIKYO〉
ヒューマンストーリー
ファッションブランドの挑戦
2022年1月12日
なぜ、その服を買うのか―
この記事のテーマは
「つくる責任 つかう責任」
ザ・イノウエ・ブラザーズ
井上聡さん㊧と清史さん
新企画「SDGs×SEIKYO」ではSDGs(持続可能な開発目標)の達成へ、「足元からの行動」をあなたと共に考えていきます。ヒューマンストーリーの第1回はデンマークで生まれ育った井上聡さん(43)=デンマークSGI、副支部長=と清史さん(41)=イギリスSGI、壮年部員=の物語です。兄弟で2004年に立ち上げたファッションブランド「THE INOUE BROTHERS...(ザ・イノウエ・ブラザーズ)」が今、世界を少しずつ変えています。(取材=内山忠昭、石塚哲也)
二人がこだわるのは、生産の過程で地球環境に大きな負荷を掛けず、生産者に不当な労働を強いない“エシカル(倫理的な)ファッション”。
主力製品は南米の先住民が飼育する最高品質のアルパカ繊維を用いたニットアイテム。ファッション性はもとより、サステナブル(持続可能)なモノづくりが注目を集め、今や世界中のショップで有名ブランドと並んで販売されている。
きっかけは、ブランド設立後、何度かボリビアを訪れ、過酷な労働環境を目の当たりにしたことだった。カシミヤと同等の品質を誇るアルパカの繊維であるのに、仲介業者に利益を搾取され、現地には貧困が広がっていた。
井上兄弟の脳裏に幼少期の原体験がよみがえる。デンマークの学校で唯一の日本人だった兄弟は、いじめの標的にされた。社会の不正義や不条理を目にすると、「今でも尋常じゃないほどの怒りがこみ上げてくる」。
工場で懸命に働く女性労働者。街では子どもが靴磨きをしていた。兄弟は「どこかで、誰かが苦しまなければならないビジネスなんていらない」と心から思い、誓いを立てた。「アルパカ本来の価値を正しく伝える世界一のニットウエアをつくろう。つくる人から着る人まで、全ての人が幸せになれる本当のラグジュアリー(ぜいたく)を提供してみせる」
二人は突き進んだ。標高4000メートルのアンデス山脈で先住民と寝食を共にし、最高の素材を求めた。「スタイルは大量生産できない」をブランドスローガンにし、モノづくりにも妥協しなかった。
当時から聡さんはグラフィックデザイナーを、清史さんはヘアデザイナーをしながら、そこで得た収入のほとんどをブランドの運営に費やす。「投資家から資金を集めたのでは、彼らの思うままにされ、自分たちの正義は貫けない」
資金が底をつきそうになるなど何度も壁にぶつかった。兄弟で衝突もした。「それでも負けなかったのは、父と母が教えてくれた信心があったからです」
44歳の若さで亡くなった父・睦夫さん。若い頃は王室御用達のガラス工芸ブランドの専属デザイナーを務めた。だが、部下である職人たちのリストラを命じられ、自ら職を辞した。「世の中にはお金や名声よりも大切にするべきものがある。それが俺にとっては、自分の信じる正義なんだ」
父が池田先生を語る時は、いつもうれしそうだった。「先生は目の前の一人を本当に大切にするんだ。お前たちも人を大事にする人になってほしい」
学校でいじめられた日には、こう言われた。「牧口先生は何も悪いことをしていないのに、正義を貫いて獄死された。弟子の戸田先生は悔しくてどれだけ泣いたか。でも絶対に仇を討つと決め、創価学会をゼロから再建した。それを受け継いだ池田先生が、今の世界的な創価学会にした。仇を討つとは幸せになることなんだ」
「父に誇れる生き方をしよう」――それが兄弟の合言葉だった。「信心は無限のエネルギー。題目を唱えれば、何事も乗り越えてみせるとの情熱が湧いてきた」
素晴らしい出会いにも恵まれた。高名なアルパカの研究者と共に最高のアルパカ繊維を開発。利益追求だけではなく社会貢献を主軸とするブランドコンセプトに賛同者が集まり、販路は大きく広がった。大量生産・大量消費にあらがう井上兄弟の情熱に世界中のファンが共感し、アンデス地方の先住民たちの労働環境や暮らしも改善されている。
つくる責任、つかう責任を問うSDGs。「SDGsを考えれば、一番は服を買わないことだね」と聡さんは言う。だが、それでは経済は回らない。アンデスの人々の暮らしも変わらない。
「だから服を選ぶ時、その服の奥にある“ストーリー”まで思いをはせてほしい。サステナブル(持続可能)って、結局、感謝を忘れないことだと思うんだ」
SDGs達成へ、足元からの行動を始めたい。
【お知らせ】井上聡さんの講演会を1月28日(金)午後7時からオンラインで開催します。参加者を募集します(無料)。電子版のインタビュー記事から申し込みできます。締め切りは21日(金)。応募者多数の場合は抽選。結果は個別の返信をもって代えさせていただきます。
2022年1月12日聖教新聞一面
ターゲット
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
13.2 気候変動対策を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む。
13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。
13.a 重要な緩和行動の実施とその実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCCの先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。
13.b 後発開発途上国及び小島嶼開発途上国において、女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。
*国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が、気候変動への世界的対応について交渉を行う基本的な国際的、政府間対話の場であると認識している。
ターゲット
14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。
14.3 あらゆるレベルでの科学的協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限化し、対処する。
14.4 水産資源を、実現可能な最短期間で少なくとも各資源の生物学的特性によって定められる最大持続生産量のレベルまで回復させるため、2020年までに、漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び破壊的な漁業慣行を終了し、科学的な管理計画を実施する。
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、最大限入手可能な科学情報に基づいて、少なくとも沿岸域及び海域の10パーセントを保全する。
14.6 開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関(WTO)漁業補助金交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で、2020年までに、過剰漁獲能力や過剰漁獲につながる漁業補助金を禁止し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業につながる補助金を撤廃し、同様の新たな補助金の導入を抑制する**。
14.7 2030年までに、漁業、水産養殖及び観光の持続可能な管理などを通じ、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国の海洋資源の持続的な利用による経済的便益を増大させる。
14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
14.1 2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。
**現在進行中の世界貿易機関(WTO)交渉およびWTOドーハ開発アジェンダ、ならびに香港閣僚宣言のマンデートを考慮。
2022年3月1日
〈SDGs×SEIKYO ヒューマンストーリー〉
広島カキ養殖の今
食べるだけじゃない「応援」とは?
この記事のテーマは「海の豊かさを守ろう」
海を取り巻く環境の変化が今、海産物に影響を与えています。広島県産カキの養殖に励む羽釜光治さん(35)=広島県廿日市市、男子部本部長=を訪ね、ブランド産地に対する応援消費のあり方を考えました。(取材=内山忠昭、石塚哲也)
穏やかな波と適度な潮の流れ、本州と四国の山々の栄養が育んだ豊富な植物プランクトン――こうした瀬戸内海の生育環境がもたらすカキは、古くから栄養価の高い食品として珍重されてきた。
中でも、「広島県産カキ」は生産量全国1位を誇る、誰もが知る“カキブランド”だ。2019年次は国内総生産量(むき身)の、実に64・6%を占める、1万7928トン。そんな「海の豊かさ」に支えられてきた広島のカキが今、大きな岐路に立たされている。
その最大の要因とされるのが、近年の海水温の上昇だ。伝統の自然採苗(カキの幼生をホタテの貝に付着させること)をはじめ、カキ養殖の多くの過程では、海水温の変化を利用し、カキの生育を進める。だが、近年は秋口でも水温が下がらず、高いまま。「それだと、カキが大きくならないんです」と羽釜さんは語る。
県内では後継者問題も相まって、カキ養殖業者の経営体数は一番多かった時から7割減。息子たちと働く父・眞次さん(69)=副支部長=は、複雑な心境を打ち明ける。「年々、海の様子が変わっていく。最近は熱帯魚も見掛けるようになった。このままでは広島でカキが取れなくなるかもしれない」。将来を見据えれば、不安は増すばかり。それでも眞次さんは「この仕事を続けることに誇りを感じています」と。
羽釜さんが家業を継ぐようになったのは、4年前に亡くなった母・京子さんの存在が大きい。生まれてすぐ無呼吸発作で生死をさまよった羽釜さんに、母はよく「地域の学会員のみんなに祈ってもらって、あなたは生きているんだよ」と語ってくれた。
「創価学会の看板があるから負けられない」と懸命に仕事に励んできた父と母。同業者や地域の多くの人に「父ちゃんと母ちゃんには世話になったんだ」と言われるたびに、「だんだん、目の前にあることを一生懸命にやることが、親孝行、地域貢献なんじゃないかと思うようになりました」。
カキ養殖に携わって13年。カキが育つのが当たり前でなくなる中で気付いたことがある。「広島のカキ屋はどれだけ、瀬戸内海の恩恵を受けてきたか。海への感謝とともに、家族や地域、取引先や学会の同志、自分を守ってくれている人たちへの感謝を忘れてはいけない」
漁業者自体が環境に与える影響もある。養殖の過程で使用するプラスチックのパイプなどが米国・アラスカ沖まで流れたり、鳥が食べて死んでしまったりしたというニュースもあった。羽釜さん一家は、行政や漁業組合挙げての海岸清掃に協力するとともに、独自に植林活動なども行ってきた。だが、「養殖業者だけでなく、地球規模で海のことを考えていかないと、とても間に合わない」。
広島のカキを守るのは並大抵のことではない。昨今は産地偽装といった新たな問題も出てきている。そんな中でも、羽釜さん一家は、岡山や九州、四国の同業者へも広島のブランドカキの幼生を安価で分け与えている。「誰かが一人勝ちしても仕方ない。『自分さえ良ければいい』という発想は結局、良い結果にならない。だけどね、広島の海でつくるカキが一番うまいんだよ」と眞次さん。
変化を強いられている生産者。ブランドを守る誇りが彼らを支えている。だが、あらがえないほど、急激に変わっていく海や気候。消費者は「食べる」以外にも、できることがあるのではないだろうか――。
羽釜さんは言う。「人と人、人と海。自分の行動も全て、どこかにつながっている。SDGsって、そのことを感じることじゃないかな」。私たちのちょっとした行動の変化が、巡り巡って「広島県産カキ」を守ることにつながる。
※SDGs(エスディージーズ)=持続可能な開発目標
ターゲット
15.1 2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。
15.2 2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。
15.3 2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。
15.4 2030年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらす山地生態系の能力を強化するため、生物多様性を含む山地生態系の保全を確実に行う。
15.5 自然生息地の劣化を抑制し、生物多様性の損失を阻止し、2020年までに絶滅危惧種を保護し、また絶滅防止するための緊急かつ意味のある対策を講じる。
15.6 国際合意に基づき、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を推進するとともに、遺伝資源への適切なアクセスを推進する。
15.7 保護の対象となっている動植物種の密猟及び違法取引を撲滅するための緊急対策を講じるとともに、違法な野生生物製品の需要と供給の両面に対処する。
15.8 2020年までに、外来種の侵入を防止するとともに、これらの種による陸域・海洋生態系への影響を大幅に減少させるための対策を導入し、さらに優先種の駆除または根絶を行う。
15.9 2020年までに、生態系と生物多様性の価値を、国や地方の計画策定、開発プロセス及び貧困削減のための戦略及び会計に組み込む。
15.a 生物多様性と生態系の保全と持続的な利用のために、あらゆる資金源からの資金の動員及び大幅な増額を行う。
15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。
15.c 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。
ターゲット
16.1 あらゆる場所において、すべての形態の暴力及び暴力に関連する死亡率を大幅に減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等なアクセスを提供する。
16.4 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。
16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 2030年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.1 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16.a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
2023年8月8日
〈SDGs×SEIKYO インタビュー〉
平和へ人々の意識の変革を
核兵器の廃絶が未来を守る道
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)
前共同会長
アイラ・ヘルファンドさん
SDGs(持続可能な開発目標)の目標16には「平和と公正をすべての人に」が掲げられています。人類の存続を脅かす核兵器の廃絶なくして、真の平和の実現はありません。核戦争防止国際医師会議(IPPNW=1985年ノーベル平和賞受賞)の前共同会長であるアイラ・ヘルファンドさんは、一人の医師として、核戦争がもたらす壊滅的な結末を国際社会に訴え続けてきました。核兵器使用の危険性が高まる今だからこそ、私たちが知るべきことは何か――ヘルファンドさんにインタビューしました。(取材=樹下智)
――長年、米国マサチューセッツ州で医師として活躍してこられましたが、核兵器廃絶の運動に携わるようになった“きっかけ”は何だったのでしょうか。
偶然としか言いようがありません。1977年、ニューメキシコ州の先住民族居留地で、医学生として10週間だけ働いた時のことです。
1冊だけ持っていった本をすぐに読み終えてしまい、本屋を探したのですが見つかりません。唯一本を売っていたのは、バス停近くの売店で、並べてあったのはロマンス小説ばかり。そこでたった1冊だけ気になった本があり、手に取ったんです。
それは66年に起きた、デトロイト近郊の原子力発電所の事故を扱ったノンフィクション小説でした。(原子炉の炉心溶融が起きたのにもかかわらず)事故から30日もの間、市民に何の情報も開示されなかったのです。
原子炉から大都市デトロイトまではわずか30マイル(約48キロ)。もし放射性物質が放出されていれば大惨事でした。事故の情報が30日間も隠されていたことで、住民は避難することもできなかったのです。
――とても危険な状況ですね。
ええ。本を読み、衝撃を受けました。それから、原子力事故による医学的な影響について関心を持つようになりました。
ボストンで臨床研修を始めた際、近くで建設予定だった原子力発電所の反対運動に参加するようになりました。その中で知り合った、医師であり著名な反核運動家であるヘレン・カルディコット博士と、「社会的責任を求める医師の会(PSR)」を創設しました。78年のことでした。
――原子力事故への懸念から出発したPSRは、どのように核兵器廃絶へと焦点を移したのでしょうか。
活動を進めるうちに、実は60年代に同じ名前の組織が存在していたことを知りました。心臓専門医のバーナード・ラウン博士らが創設した最初のPSRです。
博士たちは、核実験による人体への影響を広く世に知らしめ、それが63年の部分的核実験禁止条約へとつながりました。その後、活動を休止していたため、私たちが元のPSRを引き継ぐこととなりました。
アイラ・ヘルファンド ハーバード大学、アルバート・アインシュタイン医科大学卒。病院の救命救急センター長等を務めた。1978年、「社会的責任を求める医師の会」を共同創設。後に同会の会長、「核戦争防止国際医師会議」の共同会長を歴任した。「核兵器廃絶国際キャンペーン」の国際運営委員も担う。世界的な医学誌に、核兵器の医学的影響に関する論文を多数執筆。核兵器の非人道性について、国連や政府間会議などで証言している。
“限定的”核戦争で20億人が飢饉に
問題は最悪を「想像できない」こと
ラウン博士に出会い、“原発問題も重要だが、本当の問題は核兵器だ”と伺い、博士たちが1962年に医学誌で発表した一連の論文を読み、完全に納得しました。核兵器の方が、人類の生存にとってはるかに大きな脅威であることが分かったのです。
それから私たちは、活動の主軸を、核戦争による人間への医学的な影響へと移しました。最初のPSRに参加していた医師たちも、次々と協力してくれるようになりました。
――医師として、なぜ核兵器の医学的な影響を調査し、人々に伝えることが重要だと考えたのですか。
医師の仕事は人々の命を救い、公衆衛生を守ることです。そして、公衆衛生上の最大の脅威こそ、核兵器なのです。もし使用されれば、私たちはなすすべがないという事実を、医学界は明確に示す責任があります。
例えば、重度のやけどを負った患者のための集中治療用のベッドは、全米で2000床しかありません。たった1発の小型の核兵器が爆発しただけで、何万人もの人が重度のやけどで苦しむでしょう。そして、そのほとんどが、適切な治療を受けられないまま亡くなっていくのです。
――PSRはその後、さまざまな活動を行ってきました。
私たちは、ハーバード大学など全米各地の学術機関で、核戦争の医学的影響に関するシンポジウムを開催しました。メディアにも取り上げられ、非常に大きなインパクトを与えられたと思います。大勢の人が、核戦争が悪いことは何となく分かっていても、実際にどのような結果がもたらされるのかを理解していなかったからです。
ラウン博士が80年、心臓病研究の盟友であるソ連のエフゲニー・チャゾフ博士らと、核戦争に反対する各国の「医師の会」の連盟であるIPPNWを創設し、PSRはそのアメリカ支部となりました。
その後、米ソ冷戦が終結し、核弾頭の数は減っていきましたが、そこから本当の挑戦が始まりました。核の脅威はいまだ去っていないのにもかかわらず、人々が関心を寄せなくなってしまったのです。
90年代から2000年代初頭まで、偶発的な核戦争が起こる可能性や、テロリストによる核兵器使用のリスクなど、さまざまな警鐘を鳴らし続けましたが、あまり注目されませんでした。2007年に「核の飢饉」に関する新しい研究が発表されて、ようやく再び関心が寄せられるようになったと感じます。
――「核の飢饉」とは何でしょうか。
1980年代から、米ソ間で大規模な核戦争が起きた場合に「核の冬」が起こるという理論がありました。
多数の核弾頭の爆発によって広範囲の火災が起こり、大量のススとチリの粒子が大気中に運ばれます。それが太陽光線をさえぎり、地球の気温を著しく低下させるのです。
2007年の研究は、例えばインドとパキスタンの間で起きるかもしれない“限定的”な核戦争でも、食物生産量を著しく減少させ「核の飢饉」を起こすのに十分なほど、地球の気温を低下させることを示しました。
「核の冬」を起こすほどではない、この限定的な核戦争による「核の飢饉」で、20億人もの人々が亡くなる可能性があることが分かったのです。
つい昨年、「核の飢饉」に関する新たな研究が発表されました。そこで明かされたのは、「核の飢饉」で最も影響を受けるのは、赤道に近い開発途上国ではなく、アメリカ、カナダ、欧州、また日本や韓国といった、緯度が高い地域にある先進国だということです。
食料自給率の低い日本が最も被害を
――その要因は何でしょうか。例えば、日本にはどれほどの被害が考えられますか。
一つは、地理的な要因です。緯度が高いほど、地球全体の気温が下がった時の影響は大きい。作物が育つのに適した期間が短くなるからです。逆に、赤道に近い国では、そうした期間の長さは、ほとんど変わりません。
また「核の飢饉」が起きた時、食料の輸出入がストップすることが考えられます。自給率が低い国にとっては致命的です。
例えば、100発の小規模な核弾頭が爆発し、地球の気温が1・3度下がるという、最小規模のシナリオでは、その核戦争から2年後には、世界で約3億3500万人、日本で約8000万人が亡くなると予測されています。
――衝撃的な予測ですが、正直、100発もの核弾頭が使用されるなんて、とても想像できません。
まさしく、その「想像できません」という言葉こそ、私たち全員が抱えている問題なのです。
核戦争が実際に起きるなんて思えないし、信じられない――だから、この問題に対して十分な注意が払われていないのです。
しかし核兵器が存在する限り、いつかは使われる可能性が高い。つまり、核兵器を根絶しない限り、核戦争は防げません。
ウクライナ危機を巡って、アメリカとロシアが偶発的な核戦争に至れば、3000発の核弾頭が使用される可能性があります。国境問題で軍事衝突を続けるインドとパキスタンが核戦争に至れば、250発が爆発するかもしれないのです。米軍が対ロ戦争のシミュレーションをする時には必ず、大規模な核戦争に至ることも考えられています。核戦争は、現実に起こり得ることなのです。
――ヘルファンドさんたちが「核の飢饉」について訴え始めた時期は、ちょうど「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN=2017年ノーベル平和賞受賞)が発足した時と重なっています。
2006年、IPPNWはICANを発足させる決議をしました。05年の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議で、核保有国と非核保有国の対立が先鋭化し、合意文書を出せなかったことを受けての行動でした。
ICANは07年にオーストラリアで発足しました。10年にスイスで開催されたIPPNWの世界大会に、ジュネーブの外交関係者が多数出席し、私たちが警告した「核の飢饉」に共感してくれました。関係者は、ジュネーブにICANの国際事務所を設置する手助けをすると同意してくれたのです。
11年、ジュネーブにICANの国際事務所が開かれ、そこを拠点に、各国の軍縮大使らに働きかけるなど、活動が強化されていきました。ICANが市民社会の声をまとめる役割を担い、核兵器禁止条約への流れを後押ししました。私はICANの国際運営委員も務めていますが、SGIは、このキャンペーンを推進する主要なパートナーとなってくれました。
SGIの活動は他の団体の模範
――ヘルファンドさんは本年5月、ボストンの池田国際対話センターでSGIの代表と会見した際、「IPPNWと創価学会は、池田先生とバーナード・ラウン博士の友情からはじまった、非常に大切な関係です」「今後も、核廃絶に向けて手を携えていきたい」と語られました。
核兵器に反対するFBO(信仰を基盤とする団体)は世界にたくさんあります。しかし、その中でSGIが、ほぼ唯一無二の存在といえる理由は、核兵器廃絶への誓いを実際の行動に移しているという点です。
SGIは長年、核兵器を根絶しなければならないという思想を、たゆむことなく宣揚してきました。現在も、ここアメリカにおける主要な核兵器廃絶キャンペーンにおいて、中心的役割を担ってくれています。他のFBOのもとにも赴き、具体的な行動を促しています。SGIは、他のFBOの模範として、リーダーシップを発揮してくれているのです。
池田SGI会長は、平和提言で常に核兵器廃絶を力強く訴えてこられました。私たちに非常に大きな勇気を与え、影響をもたらしています。そしてSGI会長の弟子の皆さんが今、核兵器廃絶のために積極的な役割を果たしてくれています。SGIが果たしてこられた非常に重要な貢献に感謝を申し上げるとともに、今後のさらなる協力を念願します。
ターゲット
17.1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
17.2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
17.3 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
17.4 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
17.5 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
17.6 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
17.7 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
17.8 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
17.9 すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
17.10 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
17.11 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
17.12 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、すべての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
17.14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
17.15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
17.16 すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
17.18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
17.19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。
2024年3月9日
〈SDGs×SEIKYO インタビュー〉
最近、話題の「クラウドファンディング」知っていますか。
For Good代表 小松航大さん
課題解決の実践者として
たくさんの人が関わる
新しい「共助」の仕組み
最近、話題の「クラウドファンディング(クラファン)」、知っていますか。資金を集めているのは聞いたことあるけれど、何だかよく分からない……。そう思っている方も多いはず。社会課題の解決を目指すクラウドファンディング「For Good」の代表・小松航大さん(株式会社ボーダレス・ジャパン)に、その仕組みや歴史、方法などについて聞きました。
――そもそもクラファンって、よく分からないという人も多いです。
クラウドファンディング(クラファン)とは、群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた言葉です。簡単にいうと、実現したいことがある人々や会社、各種団体(プロジェクト実行者)が、インターネットを通し、不特定多数の人々(支援者)から資金を募ることを指します。
その特徴は、銀行融資や投資といった従来の資金調達の方法と違い、「このプロジェクトをサポートしたい!」「この人を応援したい!」という、プロジェクトや実行者に対する「共感」をベースに資金が集まること。そして、リターンの内容がお金ではなく、モノや体験、サービス、お礼、報告などになることです。
私たち「For Good」をはじめとするクラファンのサービス提供者(プラットフォーム)は、そうした「プロジェクト実行者」と「支援者」の双方の間を取り持っています。これまでにない仕組みなので、とっつきにくさがあるのかもしれません。
――なるほど。そもそも、クラファンはどのようにして生まれたのですか。
不特定多数の人々から資金を募ること自体、古くからあったものですが、現在の形のクラファンは21世紀以降、アメリカで生まれたといわれています。インターネットの普及により、手軽かつスピーディーに資金が調達できる環境が整えられたためです。
日本では、2011年の東日本大震災をきっかけに、クラファンが広がったといわれています。震災に直面した当事者への支援をスピーディーに進めなければならない。しかし、従来の資金調達の方法では、行政や企業内での決裁のあり方などの問題で遅くなってしまう。そこで、当事者自らが声をあげ、寄付を直接募ることができるクラファンに注目が集まりました。
今年の元日に発生した能登半島地震でも、クラファンが活用されています。私たち「For Good」も緊急支援チームをつくり、翌日には緊急支援を募るプロジェクトをホームページに掲載しました。
――自分もやってみたいと思いましたが、どうすればできますか。
支援者であれ、プロジェクト実行者であれ、まずは、クラファンのプラットフォームのホームページにアクセスし、「知ること」が第一歩になります。
では、「For Good」のプラットフォームを用いて説明します。支援したい方はまず、興味のある分野や課題をホームページで検索してみてください。
例えば、「地域」と検索すると、「『耕作放棄地を公園であり農園に』子どもと一緒につくる遊び場へ」「令和6年能登半島地震に対する緊急支援」など、プロジェクトの目標・目的が表示されます。
とともに、「支援総額」や「達成率」「残り時間」も閲覧可能です。そして、ニュースメディアのように記事と写真で構成された「課題の現状」を確認することができます。
その上で、賛同できるプロジェクトに対し、1000円、2000円といった少額から支援することができます。
一方、プロジェクトを実行したい方は、過去の事例を参考にしたり、私たちのようなクラファンのプラットフォームに相談したりすることをおすすめします。
――小松さんが設立した「For Good」は、社会課題の解決を目指すプロジェクトに特化し、「掲載手数料0円」のクラファンとして知られています。目指していることは?
これまで、社会課題の解決は、一部の限られた人のもののように思われていました。たとえ、「社会のために何かをしたい」という思いがあっても、どうしたらいいのかが分からず、結局、何も行動を起こせずに終わってしまうことが多くあります。
私たちは、誰でも世界をより良く変えられる未来をつくりたいと思っています。目指すは、クラファンという「共助」の仕組みによって、たくさんの人に課題解決の実践者として関わってもらうことです。
そうやって多くの人に関わってもらうことで、可視化されていなかった社会の課題をあぶり出せる。いわば、ジャーナリズムの役割を果たすこともできると期待しています。
「For Good」は、まだ設立1年半です。ですが、ありがたくも750個のプロジェクトに7万人もの方々に関わっていただき、8億円近くの支援金額が集まっています。
――クラファン自体、SDGsの17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に深く関わっていると思いました。
そうですね。
解決すべき社会課題は、まだまだたくさんあります。私たちには、無限の可能性と共に、大きな責任があります。これからも、仲間と一緒に、もっと大きなインパクトを与えられるように努力をしていきます。
こまつ・こうだい 1998年、香川県生まれ。高校時代にヒッチハイクを始め、大学進学後は、中東、アフリカ、南米を中心に27カ国・地域を訪れた。海外の貧困地域でボランティア活動をする中で、不条理な社会の仕組みを是正したいと思うように。帰国後、23歳で株式会社ボーダレス・ジャパンに入社。24歳で同社の新規事業としてクラウドファンディング「For Good」を設立。25歳で代表に就任した。Instagramは@codykomatsu、X(旧Twitter)は@Jam_Obasan__。
※SDGs=持続可能な開発目標